桜井ロータリークラブ

活動報告ACTIVITES REPORTS

グローバル奨学生 出発前卓話

卓    話

グローバル奨学生 有馬智之

食物アレルギー診療の現状と未来

AIによる診断精度向上を目指して〜

 

私は現在、国立病院機構三重病院にて小児科医・アレルギー専門医として診療に従事し、特に食物アレルギーを専門として研究を行っております。このたび、食物アレルギー診断の精度向上を目的とした研究のため、アメリカ・メイヨークリニックへ2年間の留学を予定しております。現在の食物アレルギー診療の課題と、それを解決するための新たな取り組みについてご紹介いたします。

 

⚫︎食物アレルギー診療の背景

食物アレルギーは近年増加傾向にあり、小児医療において重要な課題の一つとなっています。特に記憶に新しいのが、東京都調布市で発生した学校給食における誤食事故による児童の死亡例です。このような悲劇を防ぐため、日本全国で診断精度の向上や安全対策の強化が進められてきました。しかしながら、現時点でも「確実に安全かどうか」を非侵襲的に判断する方法は確立されていません。

 

⚫︎現在の診断の問題点

食物アレルギーの診断には、主に血液検査(特異的IgE抗体)、皮膚テスト、症状の問診、食物経口負荷試験(最も確定診断に近い)の方法が用いられています。

この中で最も信頼性が高いのが「食物経口負荷試験」ですが、アナフィラキシーを引き起こす可能性があり、専門性の高い施設で厳重な管理下でしか実施できません。しかし、専門医・設備・時間を必要とし、実施可能な施設は限られています。また、長時間の検査、精神的ストレス、アレルギー症状への恐怖、通院負担などが大きいのが現状です。血液検査などは「感作」を示すのみで、「実際に症状が出るかどうか」は正確に予測できません。そのため、最終的には専門医の経験や勘に頼る部分が残っています。また、日本では年間10万件以上の食物経口負荷試験が実施されており、医療経済的にも大きな負担となっています。

 

⚫︎AIを用いた新たな診断モデルの開発

こうした課題を解決するため、私は「AI(人工知能)を用いた食物アレルギーの診断予測モデル」の開発に取り組んでいます。

本研究では、患者背景(年齢、既往歴、家族歴など)、血液検査データ、症状の詳細、経時的変化といった多様な情報を統合し、AIに学習させることで、「実際に症状が出る可能性」を高精度に予測するモデルの構築を目指しています。さらに、メイヨークリニックへの留学では、電子カルテ情報を直接解析し、より実臨床に即した予測モデルの開発に取り組む予定です。