2019-20年度 国際ロータリー第2650地区ガバナー
佐竹力總
114年前 アメリカ東部ニューイングランドの美しい自然に囲まれて育ったポール・ハリスが、そこに住む人々の寛容、親切、奉仕の精神を受け継ぎ、友情を深めて異なる職業の4人により、シカゴで「ロータリー」をスタートしました。
若い弁護士としてシカゴにやってきたポール・ハリスが、ロータリーを創設した最大の理由、それは見知らぬ街でほかの人たちと「つながる」ことでした。それから一世紀以上が経った今では、200以上の国と地域に拡がり、35,000クラブ、525地区、34ゾーン、会員数は約120万人という巨大な活動団体になりました。
私たちの周りでは、ポール・ハリスの時代には想像もできなかったような友情とネットワークを築くための方法が数多く存在します。
それでもロータリーにおける「つながり」は独特であり、ほかに類を見ません。
また、日本のロータリーも、2270クラブ、34地区、約9万人の会員数を擁し、2020年10月には100周年という大きな節目を迎えることになります。
2019-20年度、マーク・ダニエル・マローニーRI 会長は「ロータリーは世界をつなぐ(ROTARY CONNECTS THE WORLD)」をテーマとされました。
ロータリー創設の理由は見知らぬ街でほかの人たちと「つながる」こと。地域社会とつながり、価値観を共有した人とつながり、支援を必要とする人とつながる。そうしたつながりが未来を創ります。そして、その重要な場所が地域の人が集う「クラブ」であります。
「ロータリーの奉仕を通じて、有能で思慮深く寛大な人びとが手を取り合い、行動を起こすためのつながりを築きましょう」と提唱されました。
これを受けて2019-20年度は、「伝統と革新 世界はひとつ」を地区のスローガンとしました。
私たち2650地区は、
〇シルクロードの終着点 国際色豊かな白鳳・天平文化が花開いた 奈 良
〇越前・若狭の緑豊かな山々と日本海 自然環境に恵まれた教育県 福 井
〇日本最大の琵琶湖 近代産業の先駆者近江商人のふるさと 滋 賀
〇1200年にわたる日本文化の中心地 悠久の歴史都市 京 都
この多彩な風土、個性的な文化に育まれた4府県において、世界に誇る歴史と伝統に培われた96のクラブ、約4,700名の会員で構成され、全国有数の規模を誇っています。
しかし、2016年には規定審議会でクラブの自主性と柔軟性が強調され、職業奉仕と例会を重視する日本のロータリークラブの在り方と、人道的奉仕組織になりつつある国際ロータリー(RI)の方向性との間に、次第にへだたりが生じてきていることは否めません。
私は、ロータリークラブの基本理念は「奉仕と親睦(友情)」であり、その根底を支えるものは「職業分類」と「例会出席」であると考えます。
地域でその業種を代表する人材が、自分の職業を「天職」と捉え、自身の職業の倫理性を高めつつ、その職責を通じて広く世の中のために奉仕する。この職業奉仕こそがあらゆる奉仕活動の「根源」ではないでしょうか。
そして、ロータリーの魅力は例会出席にあります。
いろいろな職業の人たちと交流すること、商業人として研鑽を積むこと、それがひいては修養の場となる。この点に尽きると思います。
このような大樹のごとき精神的支柱がなかったら、単なる慈善事業を行う人道的奉仕の社交団体であったなら、今日までこのように人の心を引きつけ、世紀を超えて発展したでしょうか。
とはいえ、グローバル化の時代に、私たちはその変化に適応してゆかなければなりません。まさに「流水に間断なし」(正しい意念が念々相続して片時も滞らない様)です。滞ることなく組織を発展させ、エネルギッシュな流れを皆様とともに守り伝えてゆきたい。すなわちいつの時代も次世代を見据え、準備を怠ることなく、激しい時代の流れに呑まれることなく適応して、ロータリークラブを守り育てなければなりません。
私は、富田謙三パストガバナー(2009~10)の時、ご縁により地区幹事長を仰せつかりました。その際、現在の地区ガバナー恒久事務所の設置に携われたことが、この上ない思い出になっています。
私は、これまでの経験を踏まえて、千玄室元 RI 理事が常に言っておられる「善意 奉仕の心」を礎に、地区スローガンを「伝統と革新 世界はひとつ」と決めさせていただきました。
【はじめに】
ガバナーをお引き受けするにあたり、私は伝統を守るとはどういうことか、と自問自答いたしました。ただ守るだけでは、古くなってゆくばかりです。伝統は守るだけでなく、常に新たな挑戦を続けてゆかなければ前に進まない、と思うに至りました。そうでなくて は、世界中の新しい世代に希望をつなぐことはできない、と確信したのです。
【善意とは】
もし「善意」というものがなければ、ロータリーはただの社交クラブです。職業はお金を稼ぐだけのものでしかなく、社会奉仕は施しにすぎず、国際奉仕は外交以外の何ものでもありません。
【奉仕の心(精神)とは】
皆さまの心の内にある「誰かに、いい事をしてあげたい」「誰かに、喜んでもらえるなら、何か私にできるお手伝いをしたい」その心なのです。他人に対する思いやりの心、助けとなる心です。(仕え奉る心ではありません)ロータリーの基本理念は、世のため人のための奉仕の心を育てる。すなわち、人の心を育てるということなのです。技術や数式、単語力などの知識を教える場ではなく、人を育て、心を育てることこそがロータリーなのです。
【結びにかえて】
2019年半ばをもって「平成」の時代は終わり、新しい「令和」の時代を迎えます。今日の世界は、ロータリーがスタートした1905年の世界と同じではありません。人口動態が変わり、変化のスピードが加速し、テクノロジーによってつながりや奉仕の新たな機会が生み出されています。ロータリー新ビジョンを達成するために、ガバナンス、構造、プロセスを合理化する。それには、社会の変化に適応できるだけの資質と能力を備えていなければなりません。
ポール・ハリスが1913年1月1日に述べた言葉があります。
「私たちはいつまでも成長して止むことはないでしょう。世界は絶えず変化しています。
そして私たちは世界ともに変化する心構えがなければなりません。ロータリーの物語は、何度も何度も書き替えられなければならないでしょう」
適応と対応という言葉があります。適応とは大切なものを残し、その他は時代の変化に合わせて行く。対応とは根無し草の如く、ただ水の流れに添って流れて行き、やがて消え去ることです。
今、国際ロータリー(RI)の使命は職業人と地域社会のリーダーのネットワークを通じて、人々に奉仕し、高潔さを奨励し、世界理解、善意、平和を希求する世界最大の人道的奉仕団体をめざすことです。
JOIN LEADERS, EXCHANGE IDEAS, TAKE ACTION
(リーダーとして会員相互の理解を深め、多様性や高潔性などロータリーの理念を学び合い、そして行動しましょう)
伝統の中から新しいものを見つけていくことが、大切ではないでしょうか。古くて古いものは滅びる・新しくて新しいものも滅びる・古くて新しいものは永遠に不滅である。
その地域に育まれた伝統は文化であります。その文化を守るだけでなく、新たな挑戦を次の世代につなげていくことであります。
地域クラブが伝統を守りつつ、新たな時代に新たなものを創造してください。
時代が目まぐるしく変化し、ますます変質しつつあるように見えますが、より良く生きようとする人間の考え方や行動スタイルは、もっと素朴で単純なものであろうと私は考えます。
ロータリアンの皆さま!それぞれがロータリーの基本理念、魅力、アイデンティティー(強み)を見据えて、ひとり一人が自ら出来ることから初めてください。そして、ロータリー活動の中に、生きがいや楽しさなど目的を見出していただき、自分を成長させるために、ロータリーをエンジョイしていただくことを切望します。