モリエールの陽気な喜劇に出て来る一つの挿話は「俄か紳士に変わった商人」が名門の貴婦人に捧げようとする手紙を扱っております。稍々もったいぶった先生に手紙の書き方を教わりたいと頼んだこの商人は、その手紙は散文でもなく、韻文でもないもので書いて欲しいと言い張りました。
「それはどちらかでなければならないんだよ」と、その先生は言いました。
「では、普段私共のしゃべっているのは、一体なんですか?」
「散文だね」
「これはこれは」と、驚いた商人は叫びました。
「私は何も知らずにこの40年間散文をしゃべっていたのだ」
以上は、元RI会長パーシー・ホジソンの「奉仕こそわがつとめ」の冒頭「進軍のラッパの響き」に記されている挿話です。職業奉仕が何のことかわからないと言うロータリアンは、この商人と同じ当惑を感じておられるのではないでしょうか。
職業奉仕は難しい、職業奉仕は漠然として掴みどころがないと一般に考える方が多いように思いますが、この挿話のなかに、ロータリーの職業奉仕を簡単に理解できる一つのヒントが見つかるように思います。
昨今、企業が引き起こす不祥事が跡を絶ちません。当事者がロータリアンであるかどうかは別としても、ロータリアンは自分の属する業界に職業倫理を伝えるための大使として派遣されているのですから、その責を免れることは出来ません。ロータリーの力不足をしみじみと痛感しております。襟を正して、率先垂範、職業倫理の向上にさらに研鑽を重ねることがロータリアンとしての基本的な勤めではないでしょうか。
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